FA(ファクトリーオートメーション)市場でローコストセンサによるソリューションを提案しているオプテックス・エフエーでは、印字検査用画像センサとして「GVS-OCRシリーズ」を発売した。同社では以前から食品業界向けの印字検査に注力しており、同製品はその最新モデルとなる。
同シリーズでは、従来から定評のあった使いやすさと検査の安定性に加え、包装機などの装置内にも取り付けしやすい省スペース設計を採用している。保存可能な設定データ数を320パターンに拡大し、専用ツール不要でパソコンやタブレットPCでの設定操作を可能にするウェブサーバー機能や、経験や勘に頼ったピント調整を不要にするモーター制御レンズなどの新機能を搭載。加えて上位クライアントへの画像転送を始めとするネットワーク機能など、昨今注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応力も強化し、これからの食品業界における印字検査の最先端ニーズへの対応を意識した製品となっている。
GVS-OCRシリーズ
食品業界における印字表記といえば原材料やその原産地、アレルゲン成分など多岐にわたるが、中でも「賞味期限」と「消費期限」については食品を購入する際にほとんどの消費者が確認をするという重要な項目となっており、これら日付印字の確実な検査は必須のものとなっている。また最近では食品表示法の改正により製造所の所在地および製造者の氏名などの記載ルールが変更され、同一製品を2カ所以上の生産拠点で製造する場合に限り「+」という記号とともに製造所固有記号(消費者庁に届出が必要)を表記することで代用することが可能になった。これに伴い表記内容の変更や新たに表記を追加する食品メーカーが増加しており、賞味期限・消費期限と併せて検査体制見直しへの取り組みも活発になっている。
同社の印字検査用画像センサは、日付や固有記号の認識・検査を対話式で設定できる「セットアップ機能」やカメラが読み取った内容から自動で検査設定をセットする「オートティーチング」といった独自機能で簡単に設定・操作できるようにしており、画像処理についての知識がないユーザーでも容易に扱えるようになっている。最新型のGVS-OCRシリーズでは、ティーチング機能の追加や設定手順の見直し、各パラメータの調整など細部にわたるブラッシュアップにより、扱いやすさをさらに向上させている。
また、印字表記では他にも賞味期限表示を簡略化する動きがある。具体的にいうとこれまで「〇〇年〇〇月〇〇日」と年月日の表示が主だったが、これを「〇〇年〇〇月」と“月” までの表示に留めるというものだ。これは昨今問題となっている食品の廃棄ロスが大きな理由になっている。
本来、賞味期限は消費期限とは異なり数日過ぎたところで製品の品質や風味にはほとんど影響はないのだが、日本の商慣習では製造日から賞味期限までの合計日数の3分の2を経過した日程までを販売期限とする「3分の1ルール」を採用していることが多く、販売期限を超えた製品については返品・廃棄処分を余儀なくされる。結果、年間約600数十万トンともいわれる日本国内での廃棄食品において、決して少なくない割合を占める結果となっている。
この状況に対して、各食品メーカーが自主的に賞味期限の表示を「年」「月」までに簡略化する取り組みを始めているが、これはトレーサビリティの観点からいうと非常にリスキーな面がある。万が一製品を回収しなければならなくなった時のトレース対策として、通常の日付表記とは別に暗号化された表記を追加するケースが急増している。
例えば「2020年10月25日の15時35分に2号ラインで製造した製品」という情報を「01A251535B」というようにアルファベットや数字の組み合わせに変換して表記し、万が一の食品事故発生時などに社内管理情報として利用できるようにしようというものである(図表1参照)。
しかし、こうした内容を画像センサで自動検査しようとすると、暗号変換機能とカレンダ機能の連携処理により、元の日付・時刻情報に変換した上で認識・検査する必要がある。ただFA用画像センサではこうしたアプリケーションに対して十分な機能を有したものは比較的高機能な機種になりがちで、ユーザーが導入しにくいのが実状である。これに対して、食品業界におけるローコスト印字検査に注力してきたオプテックス・エフエーでは既存製品からこうした暗号化への対応機能を搭載してきた。最新型のGVS-OCRシリーズでは年・月・日や時刻のみでなく、曜日や「9:00〜12:00=『A』、13:00〜15:00=『B』」というような生産シフトなどの時間帯表記への暗号化対応機能も強化している。
GVS-OCRシリーズには、ほかにもNG判定となった時の画像を呼び出し原因の確認や再調整を可能にする「NG解析機能」、最大600文字が追加登録可能な「ユーザー辞書」、認識した文字の一致度を観測しながら自動的に辞書追加を行い検査の安定性を向上させる「自動辞書登録機能」など、製造現場で役立つ機能が搭載されている。
昨今のコロナウィルス禍により、食品の製造現場もさまざまな自動化やネットワーク化、省人化による生産革新が急ピッチで進められている。同社では今後も食品業界へ向けてさまざまなソリューションを展開していく構えである。