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 ワーク表面の粗さにより発生する測定値のバラツキに

移動分解能の対策

光学式の変位センサでワーク(測定対象物)の同一面数か所を測定すると、繰り返し精度に比べて大きなバラツキが生じます。例えばワークを搬送しながら測定すると、変位量に変化がなくても測定値はバラツキます。この測定値のバラツキのことを移動分解能と呼んでいます。
移動分解能はワークの表面状態により異なるので、カタログ等にスペックとして記載できません。ここでは移動分解能を抑えるための機種選定や取付方法をご紹介します。

移動分解能とその原因

移動分解能はワーク表面からの反射が均一でないために発生します。見た目では平らなものでも、実際は表面に細かな凹凸があります。
受光素子上の光は、この粗さのために乱れます。このために発生する誤差が「移動分解能」です。
変位センサのレーザスポットはワークの表面で集光され、それが受光素子上で集光されます。
(右図参照)

理想的な環境では、ワーク表面での反射は均一に行われ、受光素子上ではきれいな受光波形が作られます。
(右下図 「理想的な状態」)
しかし実際にワークでは表面に細かな凹凸があるため、複雑な反射が発生します。
(右図「粗い面での状態」)

複雑な反射が発生すると、受光素子上ではきれいな波形が作られません
変位センサは、受光素子上の光を認識して測定を行いますが、この位置が図のように2つに分かれるなどすると、測定値にバラツキが発生します。
このようにして、移動分解能が発生します。静止状態では値がバラツキません(静止分解能)が、少しでも移動して測定箇所を変えると受光波形が乱れてバラツキが発生するため、「移動」分解能と呼んでいます。

移動分解能の小さい対象物・大きい対象物
不規則な反射が大きいほど移動分解能が大きくなります。そのため、表面の粗いワーク(鋳肌面やヘアライン面)で移動分解能が最も大きくなり、鏡面やガラス面ではほとんどゼロになります。
  • ウェハやガラスなど
  • 鋳肌面
  • ヘアライン面
移動分解能は、その名の通り平らなワークを「移動(スキャン)」させて測定します。実際のワークによる移動分解能の測定結果では、同じように平らな面でも下記のような差が出ます。
  • ■ ワーク①:白セラミック
  • 使用機種:CD5-W30(ワイドスポットタイプ)
  • ■ ワーク②:アルミ・ヘアライン面
  • 使用機種:CD5-30

移動分解能を小さくする方法① ワイドスポットタイプ

レーザスポットが小さいほど、受光素子上で小さく集光し、分解能が向上します。
ただし、表面の粗さの影響を受けやすく、移動分解能は大きくなってしまいます。

そこで、分解能に影響を与える方向(右図・水色)はスポットを小さくし、与えない方向(右図・緑色)はスポットを広げる、新しいスポット形状が生まれました。 これが「ワイドスポット」タイプです。
ワイドスポットタイプを選定するとことで移動分解能は大きく改善します。

  • ■ ヘアラインがあるアルミ材での測定結果の例
  • ①使用機種:CD5-30
  • ②使用機種:CD5-W30(ワイドスポットタイプ)
上のグラフのとおり、ワードスポットタイプを選定すれば移動分解能の影響を受けにくくすることが可能です。通常の測定ではワイドスポットを、断面形状など細かい形状を見る場合はスポットタイプを選定します。

移動分解能を小さくする方法② 取付方向

移動分解能は取付方向によっても大きく影響を受けます。影響を小さくするには下図を参考に取付けを行ってください。

●センサ長手方向とヘアラインが平行になるように取り付ける
   ヘアライン面の測定時には、センサヘッドを②の方向に取り付けてください。
  • ヘアライン面
  • 取付
    方向①
  • 取付
    方向②
  • 移動分解能の測定データ例
  • 取付方向①
  • 取付方向②
  • ワーク
    移動方向
ワイドスポットタイプが選べるレーザ変位センサ「CDXシリーズ」
CDXシリーズは、スポットタイプとワイドスポットタイプの両方をラインナップ。移動体の測定ではワイドスポットタイプ、微小ワークや断面形状など細かい形状を測定する場合はスポットタイプを選定します。
CDXシリーズ


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